2025年3月17日、京都大学 百周年時計台記念館にて開催された「第75回 情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会」において、当社社員が「心を動かすメディアとしての鉄道」と題した招待講演を行いました。
「情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会」は、新しいエンタテインメントを創造するためのエンタテインメント技術の研究、「面白さ」の基本要素を解明したり評価法を確立するエンタテイメント性の研究、教育・エクササイズ・福祉などの様々な分野での応用を探るエンタテインメント化の研究に関する発表・議論を行う学術的組織です。
本講演では、これまで当社およびJR西日本グループが取り組んできたバーチャル大阪駅をはじめとするメタバース、鉄道NFT、鉄道ゲームなど駅や車両のIPを活用した事業や、鉄道ファンを対象としたコミュニティ『“鉄道専用”SNS「Railil(レイリル)」』の構築事例についてご紹介し、それらを踏まえて鉄道の移動体験そのものを価値に転換する可能性について考察しました。
講演後には会場から多くの質問やご意見をいただき、本テーマへの関心の高さがうかがえました。
■ 会議名:第75回 情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会
■ 開催日:2025年3月17日(月)
■ 会場:京都大学 百周年時計台記念館
■ 講演者:白水 菜々重(株式会社JR西日本イノベーションズ リーダー)
■ 講演タイトル:「心を動かすメディアとしての鉄道」
■ 講演内容:
鉄道は暮らしの中に溶け込み、人々の日常を支えている。しかし、その当たり前の光景には、心を動かし、人生を豊かにする瞬間が無数に散りばめられている。発車メロディや車窓の移り変わり、アナウンス、車両のデザイン、駅で行き交う人々——五感を通じて得られる多彩な情景が折り重なり、旅情や感動をもたらしている。
ここには、映画や音楽、ゲームなどのエンタテインメントに共通するストーリー、時間の流れ、情動の喚起、没入感、インタラクティブ性、コミュニケーションといった要素が深く関わっている。それらが複合的に織りなされ融合することで、鉄道ならではのダイナミズムがあふれる体験価値が次々と創出されてきたのである。
こうした鉄道の魅力は、「目的地まで旅客を運ぶ」という機能面だけでは語り尽くせない。明治時代の開業から約150年が経ち、鉄道は速達性・快適性・安全性を飛躍的に高めると同時に、人々の心を揺さぶり、記憶に残る体験を生み出すメディアへと進化し、人と人、人とまち、そして人と社会をつなぐ役割を担うようになった。
近年はデジタル技術の発展によって、鉄道の体験価値は新たなステージへと拡張されつつある。本講演では、JR西日本グループが推進する鉄道ファンコミュニティやメタバース、鉄道ゲームなどの取り組みを通じて、リアルとデジタルを結びつけることで、鉄道の多様な魅力をいかに強化・発展できるかを考察する。鉄道を『心を動かすメディア』と捉え、その特性を活かした新たな移動体験の構築と、そこから生まれる価値を探究する。